私はこれまで色々な物事に影響を受けてきました。中でも文楽の舞台構造は造形の概念的支柱になり、ロスコチャペルの呼吸する光の空間は変容する質のイメージへ、スティーブライヒ「18人の音楽家のための音楽」は点描として色の世界を広げました。また松谷武判さんの造形性はジョイントパネルの発想になり、そして数万年前の洞窟壁画はそのジョイントパネルがつくる実態的な線と描画した線によるイメージの在り方へとなっています。こうした作品の世界感は、比較的、構造的な部分に反応しやすい私の特性が、見た目の世界だけでは乗り越えられない何かを求めていった先に見えてきたものなのだと思うようになりました。
この展覧会のタイトルは「庭の綺想学」という本の言葉が元になっています。“風景”は私の制作のテーマでもありますが、私が考える“風景”とは、単なる目の前の空間の広がりではなく、人に働きかけ、作用するものとしての風景です。現代の私たちはほぼ人が作った物や空間に囲まれており、それらは常に意図やイメージを含んでいます。そして風景は内的な要素をはらみ、私達の外でありながら内でもあると私は考えています。
関根直子
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美術手帖Web版の「有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3」(美術批評家 中島水緒さん選出)に
伊庭靖子展が掲載されましたのでぜひご一読頂けたらと思います。
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